ブロムオイル印画法とは

About Bromoil Process

ブロムオイル法は、銀塩白黒写真の銀をインクに置き換えてゆく写真技法です。
白黒写真の画像は、印画紙上のゼラチン層の中にある銀粒子で作られています。それをブロムオイル用の漂白液で処理することで、銀粒子による画像を漂白し、同時に画像があった部分のゼラチンを硬くしていきます。

ブロムオイル用の漂白液中には重クロム酸カリウムが含まれており、漂白過程で生じた3価クロムが銀の濃度分布にしたがって、ゼラチンを硬くしていきます。銀塩白黒写真の黒い部分には銀粒子が多くあり、白いところは殆ど銀粒子がないため、銀粒子の多く存在する黒い部分のゼラチンはかなり硬くなります。 反対に、白い部分は銀粒子が少ないため、ゼラチンの硬化はあまり起こりません。この漂白作用によって、画像の明暗に従ってゼラチンの硬い部分と柔らかい部分が出来上がります。それは版画の凹凸のようなものです。

漂白が終わったプリントを再び定着して再ハロゲン化した銀を取り除いた後、水洗・乾燥させます。この工程を終えると、印画紙には淡緑(灰)色の画像が残ります。この状態をマトリックスと呼びます。

乾燥したマトリックスを水につけ、ゼラチンに水分を吸収させていくと、ゼラチンの硬さによって、水を多く含む部分と少ない部分ができていき、元の画像のレリーフが出来上がります。そして、水から引き上げ印画紙上に残った水滴を取り除き、ブラシを使い油性のインク(リトグラフ用インク)をゼラチンに付けて行きます。水と油の反発性から、ゼラチンの硬い部分(シャドー部)はインクを吸着していきますが、ゼラチンの水を含んだ部分(ハイライト部)はインクを弾きます。
このようにして、元の白黒写真の画像はインクへと置き換えられていきます。

この写真技法はブラシを使いインクの載せ方によって最終的なイメージをコントロールすることが出来るため、多くのピクトリアリスト(絵画主義的写真家)に使われてきました。

※東京都写真美術館で行われたワークショップの内容です。配布された資料を元に写真を加えて作成しました。

用具・処方

印画紙

  • Kentmere Document Art
  • Agfa MCC118FB
  • Oriental FB-Ⅱ, Warmtone

現在発売されている印画紙では、Kentmere Document ArtやBergger BROM240などを使用。これらの印画紙はブロムオイルプリントを作るために開発されたため、印画紙の構造も昔の印画紙のように、ゼラチン層がむき出しになっています。

主流を占める、ゼラチン層の上にスーパーコートと呼ばれている保護膜がついている印画紙でも、 Agfa MCC118FBやOriental new seagull FB-Ⅱ, warmtoneなどはインクのつきも専用紙と比べ遜色ありません。

現像液

Kodak Dektol D163

定着液

チオ硫酸ナトリウム(10%)

漂白液 [ Gilbert’s Bleach ]

  • ストック
  • 硫酸銅:25g
  • 臭化カリウム:25g
  • ニクロム酸カリウム:1.25g
  • 酢酸(10%溶液):10ml

蒸留水にこれらを加え400mlの水溶液を作る。
使用時にはストック1に対して水を10加えて使用。ストック水溶液に加える酢酸は、希釈に使う水の酸性度によって加えなくても良い。

インキング用器具

  • ブロムオイルブラシ:ひげそり用ブラシで代用
  • ガラス板、またはアクリル板:印画紙より大き目のもの
  • リトグラフ用インク:なるべく硬いインクを使用
  • パレットナイフ
  • セラミックタイル、またはアクリル板:インクのパレットとして
  • 脱脂綿、セーム布、ブロティングペーパー、布切れ
  • シンナー:ブラシ洗浄、インクを柔らかくするときに使用
汚れてもよい格好で

汚れてもよい格好で


プリント~漂白

1. プリント

ブロムオイルに適したプリントは、コントラストが低く、ハイライトからシャドー部の細部が残っているものです。プリントの余白を1インチ(2cm)ほど取っておくとインキングの時に作業がしやすくなります。プリントのコントラストを調整する場合は、現像液の処方・希釈率・現像時間を変えて行います。

以前はアミドール処方によって現像する写真家が多くいましたが、現在、多くのブロムオイリストに使われている方法は、デクトールを1:9の希釈率でプリントすることです。停止液は水を使用し、酢酸などの酸を使ってはいけません。定着液には必ず10%ハイポ水溶液を使って5~6分間行い、水洗・乾燥させます。

2. スーパードライ

一度、水から引き上げ乾燥させた場合は、印画紙がパリパリになるほど乾かします。

3. 漂白

この作業は明るい部屋で作業できますが、外光の差し込む部屋などは避けます。乾燥したプリントを水に5分間ほど浸した後、水からプリントを取り出し、表面についた水滴を取り除きます。

すばやくプリントを漂白液の中に入れ10分間攪拌します

画像面を上にして、すばやくプリントを漂白液の中に入れ10分間攪拌します。このとき重要なことは、必ず印画紙が漂白液の液面より下にあることです。印画紙が表面に浮き上がって空気と触れていた場合、その部分が斑になってしまいます。

この時点で引き上げないように注意してください

漂白しだして5分ほどで画像は消えていきますが、ゼラチンの硬化反応は終わっていないので、この時点で引き上げないように注意してください。

この工程を終えた段階でプリントは「マトリックス」と呼ばれま

漂白の終わったプリントを水洗し、印画紙についている漂白液を簡単に洗い流します。その後、再び10%ハイポで5分間ほど定着してハロゲン化銀を取り除きます。そして水洗・乾燥させます。この工程を終えた段階でプリントは「マトリックス」と呼ばれます。

4. インキング

少量のインク(豆粒ぐらいの量)を準備したタイルかアクリル板の上に取り出し、トーストにバターを塗る要領でパレットナイフを使い薄く引き延ばします。この時、薄く斑のないように引き延ばします。そこからブラシにインクを付け、ブラシに満遍なくインクを付けるため、タイルの別な箇所で数回ブラシを叩きます。この部分をインクパッチと呼び、インクのチャージはこの部分から行います。インクパッチのインクが少なくなった時は、最初の部分からインクをチャージし、インクパッチにインクを供給します。

表面を下にして準備したガラス板(アクリル板)の上に置きます

マトリックスを3分ほど水に浸し、水から引き上げた後、表面を下にして準備したガラス板(アクリル板)の上に置きます。
そして、布(セーム布)などで水分を拭き取ります。次に裏返しゼラチン層を傷つけないように注意しながら、表面と下敷きのガラス板の上にある水分を拭き取ります。

マトリックス上に満遍なくインクをのせていきます

表面に水滴が残ってないかを確認した後、インクパッチからインクをブラシにとり、マトリックス上に満遍なくインクをのせていきます。まず、左上か右上のコーナーから手前に向かってブラシを動かし、次に横にずらしてマトリックスの表面がインクで覆われるようにします。

あまりインクをマトリックスにのせないことです

ブラシのインクが少なくなった時には、インクパッチよりインクをチャージします。この時に重要なことは、あまりインクをマトリックスにのせないことです。

水分を含んだ脱脂綿で余分なインクを拭き取ります

マトリックス上に薄いインクのレイヤーができたら、水分を含んだ脱脂綿で余分なインクを拭き取ります。すると多くの水を含んだハイライトの部分からインクが拭き取られ、イメージの輪郭が現れてきます。マトリックス上の水分を拭き取り、金づちで釘を打つような動作(ホッピング)でやさしくマトリックスを叩いていきます。

画像が見えてきます

シャドー部にあった余分なインクが中間調やハイコントラストの部分に移り、画像が見えてきます。
ホッピングを繰り返していくと、画像のコントラストは徐々に上がっていきます。
このとき、急いで画像を作ろうと焦りインクをつけすぎると、シャドーのディテールが無くなってしまうので注意しましょう。

望んだ調子が得られるまで繰り返していきます

ハイライトの部分にインクが付き過ぎる場合は、マトリックスが乾いたためと考えられます。
そのときはマトリックスを水に浸し、水分の補給をします。水分の補給をした後は、マトリックスの上に余分な水分がないか、その度に確認してください。もし水が残っていると、その部分は白く斑点ができてしまいます。インクの拭き取りとブラシによるインキングを繰り返すことで、望んだ調子が得られるまで繰り返していきます。

できあがり!

できあがり!
・・・と言いたいところですが、もう少し頑張った方がいいですね。なかなか根気のいる作業です。